大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行コ)60号 判決

覚せい剤の主な作用は中枢神経興奮であり、これを使用すると神経が興奮し、思考力、判断力が増加し単純な作業の能率が増進するといわれ、或は鎮痛剤、催眠剤および中枢性麻酔剤に対して拮抗作用を呈し中毒症状を軽減し速かに原状に復帰させる作用もあるとされるところから、居眠り症、アルコール中毒、各種うつ病等に対する治療剤として使用されているが、反面強い習慣性があり濫用すると中毒症状を起こすことが多く、しかもその中毒症状は禁断症状といわれる幻覚、忘想などの意識障害を惹起して人格を荒廃せしめ兇悪な犯罪に走らしめる危険度の極めて高いものである(この事実は≪証拠≫により認定できる)ところから、法は許同のある研究、治療等に使用するもの以外の一切の使用を禁じているのである。特に競輪選手は、公正且つ安全に競走すべき使命を担っている者であるところ、同選手において覚せい剤を使用するときはその身心の健全性を損うばかりでなく競走の公正、安全の確保は期待できなくなり、ひいては、健全な自転車競技により自転車その他の機械の改良等の公益事業の振興並びに地方財政の健全化を図ろうとする法の目的(自転車競技法一条参照)の達成を著しく阻害するおそれがある。そして、≪証拠≫によって真正に成立したものと認める≪証拠≫を綜合すると、控訴人も所属していた訴外社団法人日本競輪選手会では、前記のような覚せい剤使用の弊害に照らし、昭和四四年六月二五日の通常総会において『睡眠剤、鎮静剤及びこれに類似する薬物並びに一時的に競走能力を高める薬物を使用しないこと、これに違反したときは自粛休場及び登録消除の勧告をする』旨の決議をなし、同月三〇日付の文書でこれを選手一般に通知し、さらに昭和四九年六月には、競輪選手が国で禁じている薬物を使用するなどして公正、安全な競走を行うに不適当であると認められる場合などには、登録消除申請の勧告をすることなどを内容とする薬物使用者制裁要綱を制定し、同年七月一日より施行したことが認められる。

以上のような覚せい剤使用の弊害並びに禁止の現状に鑑みると、控訴人の覚せい剤使用が前記認定どおりの三度にすぎないものとしても、その事実が認められる以上、競輪選手として競走に出場する資格を剥奪されてもやむを得ないものといわざるを得ない。

(蕪山 浅香 安国)

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